ガラスフィルムを貼る前の知識として
ガラスフィルムを施工する前に、ガラスの種類や機能をよく調べてからでないと、ガラスの熱割れやフィルムの機能不全を招いてしまいます。その為、施工したいガラスの機能・性能をよく知る事から始めなければなりません。
賃貸であれば、管理人またはオーナーにお伺いすれば返答があるかと思いますが、戸建ての場合は建築設計図にガラスの型番が記載されていたり、またはガラスを選んだ場合は当時のパンフレットなどをご覧いただく等して把握しましょう。
フロートガラス
フロートガラスとは、一般的な窓ガラスとしてよく使用されている透明なガラスのことです。表面が平滑でゆがみも少なく、採光性や透視性に優れたスタンダードなガラスです。窓ガラスとして広く使用されてきましたが、断熱性を重視する傾向から、最近の新築住宅ではほぼ使われなくなりました。
型板ガラス
型板ガラスとは、ガラスの片面に型模様をつけたガラスのことです。光を通す割合を表す可視光透過率は、フロートガラスと同じくらい高く、見え方は明るいです。光は遮らずに適度に視界を遮るので、洗面脱衣室や浴室などプライバシーを確保したい場所で多く使われています。
すりガラス
すりガラスとは、ガラスの片面に金剛砂という研磨用の粉を吹き付け、金属ブラシで細かく磨くサンドブラストという加工を施したガラスです。すりガラスは片面が不透明になるよう加工されているので、型板ガラス同様にプライバシー確保の効果があります。一方で、水に濡れると透けてしまうため、室外用ではなく室内の間仕切りとして使われることの多いガラスです。
フロストガラス
フロストガラスとは、片面のみサンドブラストをした後に、フッ酸で表面に化学処理を施したガラスのことです。色味は乳白色の半透明で、滑らかな触り心地が特徴的です。
手垢などの汚れがつきにくいといったメリットもありますが、フロートガラスや型板ガラスと比べ、価格は高価です。すりガラスや型板ガラスよりもプライバシー確保の効果は高いですが、すりガラス同様、水に濡れると透けてしまうため、注意が必要です。
網入りガラス
網入りガラスとは、中に金網(ワイヤー)を入れたガラスのことで、飛散防止ガラスとしてよく使われます。透明タイプと型模様付きの不透明タイプがあり、ひし形の金網を入れたひし形ワイヤーが一般的です。他にも縦に金網を入れたプロステック、四角い金網を入れたクロスワイヤーなど、金網の形状は3つのタイプに分かれます。
防火性が高いのが特徴で、火災などの熱でガラスにひびが入っても破片が金網に引っ掛かり、飛び散ったり崩れ落ちたりしません。近隣への延焼を防ぐ効果もあるため、ガソリンスタンドや飲食店では、消防法で網入りガラスの導入が定められています。
金網が入っているため、割れにくいと勘違いされやすいですが、金網は飛散防止のためであり決して割れないガラスではありません。割れにくさは通常のガラスと変わらないため、過信しないようにしましょう。
強化ガラス
強化ガラスとは、フロートガラスや型板ガラスに約650℃~700℃もの高熱で加工を施し、急激に冷却して強度を高めたガラスです。見た目はフロートガラスと変わりませんが、衝撃に対する強度は一般的なガラスと比較して約3~5倍程あり、万が一割れたとしても、通常のガラスのように鋭い破片にならず粉状に砕けるので、破片による怪我のリスクも少ないです。
この性質から強化ガラスは「安全ガラス」とも呼ばれ、一般的な住宅以外にも学校やオフィス、デパートで広く使用されています。
ペアガラス
ペアガラスは複層ガラスの一種で、構成する2枚のガラスの間に空気を封入し、中空層をもたせたガラスのことです。
熱伝導率の低い空気の層で、ガラスを通した熱移動を防ぐ、高い断熱性が特徴です。
夏は外の熱さが室内に入り込むのを防ぎ、冬は室内の熱が外に逃げるのを防ぐため、冷暖房の省エネ効果が期待できます。
さらに中空層がガラス自体の冷えを防ぐため、冬に窓ガラスが結露しにくいというメリットも。冬の結露で悩んでいる方は、ペアガラスへの交換を検討すると良いでしょう。
トリプルガラス
トリプルガラスは3枚のガラスで構成され、2層の中空層をもったガラスです。
断熱性能が非常に高く、省エネ効果や結露を防ぐ効果は、ペアガラスよりも優れています。遮音性や防音性も高く、割れにくさから防犯面でも効果的です。
一方で使用するガラスが多いので価格は高く、重みも増すためサッシが開け閉めしづらくなるデメリットも。
トリプルガラスを使うときは、サッシの開けやすさを考慮して、通常の引き手ではなくハンドルタイプを使うのもおすすめです。
Low-E複層ガラス
Low-Eとは、「Low Emissivity(低放射)」の略で、2枚のペアガラスの内どちらか一方の中空層側に、特殊な金属膜をコーティングしたガラスです。ペアガラスよりも高い遮熱・断熱性がありながら、トリプルガラスよりも軽量なのが魅力的。
Low-E複層ガラスは室内側と室外側、どちらにLow-E膜をコーティングするかによって、断熱タイプと遮熱タイプに分かれます。
断熱タイプは、室内側のガラスの中空層にLow-E膜をコーティングし、外からの日射熱を逃さずに室内を一定の温度に調整。
一方で遮熱タイプは、室外側のガラスの中空層にLow-E膜をコーティング。断熱タイプとは対照的に、外からの日射熱を防いで室内の温度の上昇を防ぎます。
一般的に断熱タイプのLow-E複層ガラスは、冬の日射熱を逃さないよう寒冷地帯で多く使われます。それに対して遮熱タイプのLow-E複層ガラスは、夏の強い日差しを遮るために温暖なエリアで使われるケースが多いのが特徴です。
真空ガラス
真空ガラスとは、構成する2枚のガラスの間の中空層が、真空になっているガラスです。
構造は複層ガラスと変わりませんが、中空層が真空のため、熱の移動がまったくありません。
価格は高価ですが、機能的なガラスの中でも特に高い断熱性を誇るため、断熱性を重視したい方は真空ガラスを検討す良いでしょう。
エッチングガラス
エッチングガラスとは、表面に彫刻のような装飾が施されたもの。エッチングとは、ガラスの表面を化学薬品の腐食性を利用して一部削り、形を整えたり装飾を施したりする加工技術。最近では、研磨剤を使用したサンドブラスト技法での装飾も増えています。
目隠し効果を得られるだけでなく、工夫次第では絵画のようなデザインも可能なため、オリジナル性の高い窓ガラスが楽しめます。ただしデザインが複雑になるほど高価になるので、注意してください。